とんでもなく不届きながら、この直感を僕は知っていた。

だけどそんなもの認めたくない一心で、僕は呪文を口の、胸の、心の中で繰り返した。

静まれ、静まれ……考え直せ、考え直せ……落ち着け、落ち着け……ありえない、ありえない……バカはよせ、バカはよせ……

ひたすら、今の自分を否定する呪文を連続させて、

ふいに、

――ありがと――

さっき、彼女の口から発せられた一言がカムバックしてきて、

「………」

一瞬、脳内が、真っ白になった。

ああ、ヤバい。

そう思った時にはすでに、僕はただなんとなく、階段の上を見上げてしまっていた。

見上げたかった。そう感じて、思って、見ていた。

どうやら僕は―――