「うーん、私もね、まあ、そう思うんだけど……なんか引っ掛かって。喉の奥に魚の骨が刺さったみたいで気持ち悪いのよ」

「それで、空き部屋のりかよ?」

問うと、彼女は苦笑しながら、まあね、とあやふやに答えた。どうやら、ここを調べていること自体、思いつきらしい。

ゴソゴソと押入れに頭から入っている彼女を数秒、呆れた溜め息を漏らしつつ見やっていた僕は、スイと、階段下に目を向けた。袋から飛び出したらしいタマネギやニンジンが、見える。

「あー……まあ、ほどほどにしとけよ。俺もう、降りるから」

「あ、うんー」

いい加減に返ってきた言葉を耳の端に捉えつつ、背を向けて階段を降りようとした時、

「あっ、冬弥!」

「っ、どうした!?」

真乃の声が急に跳ね上がって、僕の心臓も跳ね上がった。驚いて、空き部屋に取って返す。

押入れから頭を出した真乃が、

「リンゴジュース、もうなくなっちゃってたんだけど……買ってきてくれてる?」

と、さも当然のように、なにもかもをすっ飛ばして、世界でそれこそが一番大事だという風に、訊ねた。