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家に戻って玄関を開けると、夏輝の靴はまだなかった。それに、デンさんが来ている様子もない。

―――けど―――

(おいおいおい、なんだよ、なんなんだよ!?)

姉貴の靴が、ひどく乱暴に脱ぎ散らかされていた。

見た感じ、慌てて脱いで、そのまま整えなかったようだけど……姉貴は、使ったものをそのままにしておくような性格をしてない。

車椅子で外に出る時は、姉貴も一応靴をけど、帰ってきたらすぐに靴箱の中へ入れている。こんな風に散乱しているのは、初めて見た。

犯人は、解からないでもない。いやむしろ、すぐに解かる。姉貴の靴を履いて、けど整えないヤツは、真乃しかいないからだ。

だけど僕は、別にそんな、靴を脱ぎ散らかしたことなんかどうでもよかった。肝心なのは、どうして真乃が靴を脱ぎ散らかしているのかだった。

「真乃! 真乃、いるか!?」

買ってきたものを靴箱の上に置いて、僕はずかずかと廊下を歩いた。

我が家は、玄関入ってすぐ目の前が、廊下と階段だ。右が廊下で左が階段、廊下の右手は手前から順に和室、リビング、そしてキッチン。