オレンジ色にして

(それじゃあ、僕もバカだな。姉貴になにをしてやればいいのか、答えが見つからない)

自虐していると、真乃が僕の横に来て、車椅子にすとんと座った。

なんだろうか?

なにをする気だろうか?

思っている間に、彼女が口を開き、

「ごめんね、悪かったわ。アナタにも、夏輝ちゃんにも。秋乃さんにも、伝えておいて」

椅子に腰かけたまま、顔を上に向けて、僕を見やった。

向きでは、お互いに顔を逆さまにして見てる形だ。

車椅子に座る、姉貴じゃない姉貴は、でも、まったく同じ目の輝きをしていた。

見入ってしまいたいほど奥のある、でも透き通った黒。いや、漆黒っていうほうが、ピッタリだ。

どんなに有名な画家でも描写しきれないような、綺麗な目だった。

ふと、その瞳が、すがめられた。真乃の眉が、若干しわを寄せる。

「ねえ、こんなこと言うのなんだけど――アナタ……どこかで前に、逢ったことない?」

「え――あ、ああ。前にこの広場で逢ったろ? コスモスが咲い」

「違う」

記憶を辿って答えた僕を、真乃はぴしゃりと、遮った。