オレンジ色にして

「ははっ」

と、なぜか真乃が、笑った。

「なに言ってんのよ、アナタ。本当に大変なのは、秋乃さんのほうなんでしょ。私なんかが出てきちゃって、多重人格になっちゃって」

「……」

「あ、ちょっとやだ、黙らないでよ。ほんとに私、悪者みたいじゃないの」

「あ、ごめん」

反射的に謝ると、真乃はまた、首をふるふると振った。

「あーあーもう、私が謝ってんのよ? ごめんなんてアナタに言ってほしくないし、言うべきじゃないわよ」

「……」

ごめん、以外にその時はなんて言えばいいのかわからなかったから、僕は黙って立っていた。

はたから見たら、誰も乗っていない車椅子のグリップを持って突っ立っている、バカに見えるかもしれない。

けど、バカはバカなりに悩むってことを知った。

いや、もしかしたらバカのほうが、ずっと悩んでいるのかもしれない。

答えが見つからないから、人間は悩むんだ。