オレンジ色にして

本当なら精神科のあと、姉貴の足の定期検診で外科へ顔を出すつもりだった。

だけど、仲代先生との対談を終えた真乃は、そのまま姉貴と交代することもなく、足早に山下病院を出てしまったのだ。

もっとも、真乃は歩けるし、広田のかおをもういっぺん見る気にはなれなかったから、僕も特別文句は言わず、ここまで着いてきたのだけど。

「気にすんなよ。お前だって、その……」

と気を遣おうとして、なんと言っていいかわからずに、

「いろいろ、大変なんだからさ」

なんだか、しょうもないことを言ったような気がした。

いざという時に気が利かなくなるのは、僕があくまでも『おばさん臭い』だけで、世間慣れした本物のおばさんじゃないからだ。

学校じゃかなり、老けてるほうだと言われるのだけど。