ひゅんっ、と飛んだ石は、今度は一度も跳ねることなく、じゅぼっ、という情けない音ともに水の中へ突っ込んだ。

それが腹立たしかったのか、水切りをしていた真乃が僕のほうをちらりと、いや、ぎらりと見やる。

「冬弥!」

「な、なんだよ」

怒鳴り声で呼ばれて、一瞬たじろいだ。

なんだか、姉貴に怒られているようで気分が悪い。

「アナタ、なんで黙ってたのよ!」

「……」

彼女が言っているのは、彼女が多重人格障害で出てきた、もうひとりの姉貴だということ――

つまり、彼女は始めから彼女自身じゃなかったってことをだった。

「そんなにも私っていう存在が信用できなかったの!?」

「……」

「なんとか言ったらどうなのよ!!」

手にしている小石を投げられるような気さえして、僕は、

「ご、ごめん」

と口にするしか、なかった。

「っっ……!」

真乃が苦虫を噛み締めたように思いっきり顔をしかめて、僕に背を向ける。

また、石を水に投げ始めた。

(とんだとばっちりだよ)

と思う僕は、溜め息も枯れた。