「わかったよ」

気圧されながら、腰を折ってそっと姉貴の背中に手を回す。

すると姉貴は、僕の首っ玉に腕をきっちり回した。

母さんと姉貴がこうやっているところを、僕は何度か見たことがあった。

「で?」

立ち上がらせた僕は、なんというか、恋人がするような熱い抱擁の形のまま、姉貴に訊くハメになった。

「次は?」

「降ろして」

「は?」

「降ろして。花壇の中にそっとね」

「……」

突拍子もない、わけもわからないことだとは思った。

けど同時に、たぶんなにを言っても無駄だろう、姉貴の言う通りにするしかないだろうとも、思わせられた。