彼女には、まったく悪びれるという様子がない。

そうして堂々としているからか、真乃もおとなしく気配をしまったようだった。

「あ、そう。それで精神科医さん? 私はまたどうして、精神科に通されたのかしら? この人――」

「『この人』じゃなく、冬弥くん、ですよ」

仲代先生が訂正してくれて、真乃も、やれやれといったように一度、首を緩く振った。

「――冬弥が精神科にって言うから、来たわけだけど。私、ガン以外患ってないわよ」

ガン、とハッキリ口にする彼女に、けれど仲代先生は、

「真乃さんは、ガンではありません」

まったく正反対の強さで、ハッキリと返した。

「アナタは、多重人格障害です」

……ああ。

僕だって思ったよ。

そんな言い方で、いいんすか……ってね。