オレンジ色にして

それからまたいくつか、仲代先生は『一条真乃』に質問をした。

最近の景気はどうですかとか、

お茶と紅茶はどっちが好きかとか、

ランニングはいつもどれくらいするのか、

兄弟姉妹はいるのか、

ほかにもそんな、彼女達からすれば当たり障りのない質問を、いくらか。

僕からすれば、姉貴の顔、姉貴の声でそこに存在している真乃が、けれど姉貴とはまったく違う感性を披露していることに、思いきり違和感を覚えずにはいられなかった。

やがて、ペンを胸ポケットに差した仲代先生は、カルテをとんとんと机の上で整理した。

「だいたいのことはわかりました。真乃さん、ありがとうございます」

応える真乃は、組んでいる腕を少し緩めて、手をひらっと振った。

「いいのよ、別に。――……ねえ先生、今度は私から質問させてちょうだい」

「はい、なんでしょう」

「アナタは、私の、なんの担当医、なの?」

「……」