オレンジ色にして

思っている間に、仲代先生がまた、別のサラサラ、くるり、くるり。

「その事故にあって、アナタはどうなったんですか? 怪我の後遺症などは?」

「ないわ。手術はうまくいったし、歩くのにも問題ないし。ただその時にオヤジは死んじゃった。おふくろのほうは、後追いってやつよ」

「そうですか、それはまた。お悔やみ申し上げますわ」

サラサラ、くるり、くるり。

「事故に遭ったのが一番古い記憶で、その後遺症はないんですね。わかりました。――それで、ガンのほうはいつ頃から?」

「? ……それは、いつ頃、から、だったかしら……? よく覚えてないわ」

「そうですか」

そうしてまた、サラサラ、くるり、くるり。

当たり障りないことばかりを訊いているようだけど、僕の耳にはどれもこれも、『アンタハ、ホンモノデスカ??』と質問しているように聞こえてくる。