オレンジ色にして

傍観していて、仲代先生がなにを狙っているのか、わからない。

教えてしまうなら、今、そう言えばよかったはずなのに……。

まだなにか、タイミングが悪いんだろうか?

よく、わからない。

素人目にはどうしようもない判断をつけず、仲代先生は『質問』とやらを続ける。

「ところで真乃さん、アナタの一番古い記憶は、なんですか?」

「古い記憶って、子供の頃とか?」

「ええ。ちなみに私の場合は、近所の男の子と遊んでいて、水を溜めた砂場に突き落としてやったというものですが」

仲代先生の幼少の記憶が、今の彼女からしても、容易に想像できてしまうのは僕だけだろうか?

真乃は、しばらく視線を泳がせとから、しみじみと言った。

「――そうね、一番古いのと言ったら……事故に遭ったことかしらねぇ」

「! ……ほう、事故でしか。それはそれは」
ピクリと仲代先生の眉が片方、跳ねたのが見えた。

そしてその時、僕も同じように、反応していた。

(事故――ってまさか、姉貴が歩けなくなった時の……!?)