オレンジ色にして

仲代先生はカルテを手に取ると、指先でペンをもてあそび始めた。

「まずは、そうですね……誕生日を教えてください」

「私は――十二月二十四日よ」

「あら、クリスマスイヴなんですね、素敵」

「まあ、ね」

人を翻弄するほど朗らかな――どこか一瞬、広田医師を思い出させるような――笑みを飾ったまま、仲代先生はサラサラとカルテにメモを取り、くるり、くるり、ペンを二回転させる。

「それじゃあ、家族構成は?」

「家族ねぇ……オヤジとおふくろはいないわ。独り身よ」

「そうですかそうですか、なるほど」

また、サラサラ、くるり、くるり。

彼女達は、姉貴の問題のはずなのに、姉貴を間に入れず、話を続ける。

まるで姉貴なんて、この世にいないように。

「つかぬことをお聞きしますが、近頃なにか、変わったことはありませんでしたか?」

「変わったことって?」

「ええ。たとえば、近所の犬がやかましいとか、偏頭痛がするとか――」