オレンジ色にして

僕はまた別の意味で呆気に取られ、

仲代先生が、まあまあ落ち着いて、という言葉と手振りに、苦笑を混じらせる。

「とりあえず自己紹介しますね、真乃さん」私は仲代多美、アナタの担当医です。さ、アナタは?


「……私は真乃よ。一条真乃。よろしく。で、アナタはなんの医者? 私のガン?」

(い……一条?)

姉貴なのに、苗字まであって、それも違うなんて、またビックリした。

自分でも落ち着けるように、僕は手近なところからパイプ椅子を引っ張って、それに座った。

完璧に、傍観の構えだ。

仲代先生は、なぜだか、やけににこやかな顔で言う。

「その質問はとりあえず置いておきましょ? 不躾で悪いんだけど、私からいくらか訊きたいことがあるんです、いいですかね?」

「? ……まあ、いいけど、なに?」

そこでスムーズな動きで足を組もうとした真乃は……車椅子は意外と横幅が狭くて、上手く組めず、諦めた。