オレンジ色にして

「それでは秋乃さん、突然ですみませんけど、催眠療法を試してみない?」

「催眠、ですか?」

「そう、催眠療法。簡単に説明してしまうなら、今ここで真乃さんを呼び出してみる、ということです」

仲代先生は、デスクのアロマキャンドルを手に取った。

「別に難しいことじゃありませんし、怖くもありませんよ? どうしますか? 『今』というわけじゃなくても、いいんですが……?」

チラリと見やれば、姉貴は、難しい顔をしてアロマキャンドルを見つめていた。

「危なくは、ありませんか?」

「あっ、ぜーんぜん大丈夫ですよ。秋乃さんからしたらたぶん、ちょっと眠くなるだけじゃないかしら」

「……」

「真乃さんとお話しておくのは、できるなら早いほうがいいんです。呼び出したからって、秋乃さんがその瞬間どうにかなってしまうわけでもありますし、私もプロですから、安心してください」