仲代先生は、訊ねた僕ではなく、姉貴のほうをチラリと盗み見た。

姉貴はその視線に気付いてうつむかせていた顔をあげ、やや置いてから応えた。

「あの、教えてください。その先」

先生は、はい、と前振って、言った。

「真乃さんはたぶん、『自殺志願者』です」

「じ、じさ――って、は?」

「自殺・志願・者。たぶんね」

突拍子もない単語に驚いてすっとんきょうな声をあげた僕に、仲代先生が、英語の発音を教えるように、区切った。

そして、ひょいと肩をすくませながら続ける。

「まあその辺りは、予想するよりも本人に聞いてみるのが早いでしょうけどね」

「ほ、本人にって……」

なにをふざけたことを言っているんだろう、と思っている僕達の前で、仲代先生はおもむろにデスクの一番下の引き出しを開けた。

中を覗けば、袋詰めにされたものや板、ブロックタイプのチョコレートがぎっしりと詰まっていた。