そんなんじゃないんだから、もっと自然にしてろよ。

姉貴は悪くないんだから。

と、そう言ってやりたかったけど、また、作った笑顔で流されるのかと思うと、悔しくて、切なくて、結局はやめてしまった。

僕は先生に訊ねた。

「あの、じゃあどうして真乃は、末期ガンなんてことを……?」

仲代先生は、あー、と小さくぼやきながら、今度はデスクのアンケートに目を向けた。

また今回も姉貴に書かせていて、これを見るのと見ないのとでは、だいぶ答えが違うらしい。

看護士さんが、そう言っていた。

彼女はアンケートの上から下までジックリと眺めると、眉間にしわを寄せたまま答えた。

「たぶん、末期ガンじゃなくてもよかったんだと思うわ」

「え?」

「たぶん真乃さんは、末期ガンじゃなくても、たとえば白血病とか、鳥インフルエンザでも、なんでもよかったのよ。

要は、自分が死ぬかもしれなければ、なんでもね」

「し、死ぬかもしれなければって――そんな、……どういう意味ですか?」

「あ~……難しい、答えです」