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もうひとりの姉貴が現れてから、今朝、僕が彼女と話したことを、あらかた先生に伝え終わってから、
「真乃は、末期ガンでもうすぐ死ぬって言ってたんですけど……それは?」
と訊ねると――姉貴は全力否定した――先生はボールペンを指先で遊びながら答えた。
「言いましたよね? お姉さんの中のもうひとりは、本当の意味で、もうひとりのお姉さんだって。真乃さんが、秋乃さんにはない病気を患っていてもおかしくないんですよ」
「じゃあ、姉貴にガンはないんですよね?」
「まあ、ないでしょうね。真乃さんが言ってるガンっていうのは、真乃さんだけが認識してるんだと思います。
詳しく検査してみる必要はないと思いますよ。末期ガンなら、秋乃さん、アナタこんなにピンピンしてらんないもの」
仲代先生の言葉に、姉貴は弱く小さく微笑んだ。
さっきから、姉貴は基本的に黙ったままだ。
たぶん、自分が『問題児』に思えて仕方ないんだろう。
僕らに迷惑をかけることしかできない、役立たずの存在だと、勝手に思い込んでいるのかもしれない。
もうひとりの姉貴が現れてから、今朝、僕が彼女と話したことを、あらかた先生に伝え終わってから、
「真乃は、末期ガンでもうすぐ死ぬって言ってたんですけど……それは?」
と訊ねると――姉貴は全力否定した――先生はボールペンを指先で遊びながら答えた。
「言いましたよね? お姉さんの中のもうひとりは、本当の意味で、もうひとりのお姉さんだって。真乃さんが、秋乃さんにはない病気を患っていてもおかしくないんですよ」
「じゃあ、姉貴にガンはないんですよね?」
「まあ、ないでしょうね。真乃さんが言ってるガンっていうのは、真乃さんだけが認識してるんだと思います。
詳しく検査してみる必要はないと思いますよ。末期ガンなら、秋乃さん、アナタこんなにピンピンしてらんないもの」
仲代先生の言葉に、姉貴は弱く小さく微笑んだ。
さっきから、姉貴は基本的に黙ったままだ。
たぶん、自分が『問題児』に思えて仕方ないんだろう。
僕らに迷惑をかけることしかできない、役立たずの存在だと、勝手に思い込んでいるのかもしれない。