真乃があるけることについては、本当はもう歩けるからだってことを仲代先生から聞いて、そして姉貴自身が歩けない理由が精神的なことだということも、知っていた。

そのことを先回りして、目ざとく、言ってやったわけだ。

なんでか、してやったりという気分がしたけど、それも一瞬、なんでこんな妙な対抗心を燃やしてるんだろうかという、逆のやるせなさが湧き上がってきて、むしゃくしゃした。

過保護なんだろうか、僕は。

「それなら、どうしてまた精神科へ? なにかありましたか?」

「あの、それは……」

流れから出てきた当然の質問に、これも(僕からすれば)当然、姉貴が言いよどむ気配があった。

「……」

僕が代わりに答えようかと思ったけど、なにが悲しくて、なにが嬉しくて、姉貴が多重人格なんだってことを、わざわざ言わなくちゃいけない?

姉貴だってどうして、そんなことを僕から人に伝えてもらわなくちゃいけない?

そんなこと、彼女がそもそも望むだろうか?