ただ、僕がやらなきゃいけない、僕じゃなくちゃいけないということはないから、それをわざわざ自分こら言うわけにはいかないのだけれど……

そして、姉貴も広田医師に押してもらうことになにも文句を言ってないし、遠慮もしてない。

ただのひとり相撲なら、口を挟む気にもならない。

広田医師が、訊いた。

「それで秋乃さん、今日はどちらへ? まっすぐ外科へ行かれるつもりだったんですか?」

「あ、いえ、その」

姉貴は押しが弱い、気が弱い、物事を、あまりハッキリとは言わない。

だからなにか質問されるとたいがい、まずは言いよどむのだけど、広田医師を前にした時の姉貴のそれは、普段の反応とは、同じであって違う気がした。

「今日はあの、精神科のほうに……」

「精神科?」

「別に、足のとは関係ないんで」

広田医師が頭のてっぺんに『?』マークを浮かべたとこらで、僕はすかさず切り返した。