「それでとにかく仲代先生に診てもらわなきゃいけないだろうなと思って、病院まで来たんだ。それで受付に行ってる間に、姉貴が」

けど、言わずもがなっていうのがあるから、そこで言葉を切った。

姉貴は、受付に行ってる間に、どうなったのか、そして察してくれた。

「そう……」

と、短い返事だけだったけれど。

僕は、姉貴に怒られたことがない。

歳が離れているせいもあるし、彼女は車椅子生活で、僕は健常者(っていう言葉は、あまりすきじゃないけど)に対してヘンな劣等感を抱いているせいで、怒りもしない。

だから僕の口調はときとして、なんだか押し付けるようなものになってしまう。

さっき、言わずもがなって思ったのも、そのせいかもしれない。

(後悔っていうか、気付いた時にはもう、言ったあとなんだよな、だいたい)

「お待たせしました、秋乃さん」

自嘲っぽく思ったところへ、車椅子を押して広田医師が戻ってきた。

姉貴の横顔……また、本の少し、顔色が変わる。

僕はそれを、ただ黙って見ていた。