オレンジ色にして

「おはようございます、秋乃さん」

と返す白衣の男――姉貴の担当・広田医師は、あくまでも快活で、溌剌としていた。

おばさん臭い根性の僕が勝手に決めたイメージカラーだと、サマーブルーみたいな人だ。

ほんの少し、うつむいた姉貴の横顔が赤らんでいるような気がして、

(ちっ)

ともう一発、舌打ちをしておいた。

なんだか、娘の彼氏を見た父親の気分だ。

「今日はどうしたんですか、車椅子もなしに?」

僕に代わり、普段の診察から姉貴を見てきているからか、彼は慣れた手付きで姉貴を抱え、すぐそばのソファーに座らせた。

僕がやろうとしたことが横取りされてなおさら、やるせなさが湧き上がってくる。

姉貴や夏輝の面倒は僕が担っているから、本当に、娘を連れ去られたような気分だっ。