オレンジ色にして

「ちょっと待ってて」

僕は真乃を受付から少し離れたところで留めた。

そして、

「すみません――『榊原秋乃』です。精神科の、仲代先生はいますか?」

そっと後ろを指差しつつ、真乃には聞こえないように、訊ねた。

すると受付の人は、姉貴の名前を覚えていたのか、ああ、と手を打った。

「秋乃さんですね。はい、仲代先生いらしてますよ。――あ、外科のほうも一緒に行きます?」

「えっ、外科ですか?」

「ええ。外科の広田先生、足の定期検診がそろそろだったっておっしゃってましたよ」

「足の……? ああ。じゃあ、そっちにも一緒に行きます」

姉貴が足の定期検診を受けているのは、知っている。

だからすぐに納得いった。

たしか、うろ覚えだけど、腕と人のいい先生が見てくれていると姉貴から聞いた気がする。