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なんとか真乃を説得した僕は、タクシーで病院まで行くことにした。

タクシーの中で、彼女が言った、末期ガンの単語がグルグルと回ってしまう。

(まさか、姉貴はガンなんじゃ……?)

そう思ってしまったが最後で、どうにも、真乃の顔を見るのが怖くなった。

彼女の内側で、もう取り返しのつかないなにかが起こってしまっている……?

真乃とは違う、もしかしたら、どうしようもないことが、起きているかもしれない……?

想像するだけで、膝の上で握った手がじっとりするほど、怖い。

だから僕は、病院に着くまでの間ずっと、彼女とは反対の窓にひたいを擦り付けていた。