真乃を、睨んだ。

「死にたくないって……だったらなんで、あんなこと……!」

ところが、

「仕方ないじゃないっ!」

彼女の瞳のほうが、放つ光は強かった。

「私――もうすぐ死んじゃうんだから! 仕方ないじゃないのっ!!」

「……は……なに言って……?」

「なに? ……言ってなかった? 私、末期のガンなのよ」

(……は……?)

水を打ったみたいに場が静かになって、思わず棒立ちになってしまった。

突拍子もない『末期ガン』という単語に対してだったのか、

姉貴の顔でそんなことを言われたのに対しての衝撃だったのか、

あまりよく、わからなかった。

「――ン?」

ただ、真乃が反応して、

「あっ、ちょっとアナタ、ち!」

「?」

「血! すごいことになってる!!」

「……あ……」

自分の腕からシャツを真っ赤に染めるほどの血が、いつの間にか流れていたことも、気付けない僕だった。