オレンジ色にして

「だっ、大丈夫!?」

と、彼女が慌てた――その隙に、

「渡せっ!!」

「あっ!?」

僕はすばやく包丁を取り上げて流しに放り、真乃の腕を掴んで動きを制した。

ドン、と叩きつけるように彼女の背中を壁へ押して、抑える。

腕が痛みに震えて、頭がどくどくと鳴っている。傷は、怖くて見られない。

僕と真乃は、今の一瞬だけで、肩で息をするまでになっていた。

「本当に……なに、考えてんだよ……?」

「……」

真乃は答えない。

僕は、ゆっくり手を放しながら、体を離しながら、続ける。

まだ息は上がっている。

「包丁なんか突きつけて、……死にたいのかよ」

「死にたいか死にたくないか、どちらかと言えば……当然、死にたくないわ」

答える彼女の声を聞きながら、流しに放った包丁をサッと洗い、戸棚へしまう。