オレンジ色にして

――彼女が突きつけたそれは、

「まあいいわ……もう私、どのみち長く生きらんないんだし」

先の鋭くとがった、細長い刺身包丁。

体が反射的に動いたのと、包丁が姉貴の喉笛を突いてしまいそうになるのは、同時だったと思う。

すんでもすんでのところで、彼女の手をしっかり掴む。

「なっ、なに考えてんだよ!?」

「ちょっ、やっ、放してよ! なによもう!!」

「お前こそなんだよ! このっ、渡せっ!!」

「っ!」

そうして、包丁を奪い合う危ないやり取りの最中、

「っ、ぃ、つ――!」

「あ!」

長い刃先が、僕の腕に少し刺さった。

痛みのせいで一瞬、顔をしかめる。