オレンジ色にして

一分一秒がこれほど長く感じられたことはないと思うくらい気疲れした僕は、解放感を味わう溜め息を吐きつつ、軽く言った。

わざとゆっくりゆっくり洗っていた皿の水を切る。

「んじゃ、そろそろ行こうか」

「? ……行くってどこに?」

皿を拭いて、しまって、エプロンを外す。

「病院だよ」

「病院……?」

彼女がなにか察してしまう前に、僕は嘘の先手を打った。

「ほ、ほら、お前最近記憶が飛んだりするだろ? だからそれで、病院に……ま、真乃?」

けれどその、姉貴にも当てはまる上手い嘘は、尻すぼみに消えた。

真乃が、なんだか神妙な顔つきで立ち上がったせいで。