オレンジ色にして

「――お前のことも教えてくれよ?」

「私のこと?」

おわんとおはしを構えたまま見上げてくる彼女に、こくり、うなずく。

「こないだはほら、あんまりお前の話し、真面目に聞いてなかったからさ」

そして、直後に後悔した。

「ああっ、こないだって言えば!」

「!?」

そうだ、僕は商店街を歩きながら何度も、お前は誰だ? とか彼女を『姉貴』と呼んでしまったのだ。

「アナタと私、一緒に商店街行ったわよね!」

間違いなく、それを思い出されたと思った僕は、

(やっぱり口は災いの……!)

「私のリンゴジュース、ちゃんとまだ取っといてある?」

と続いた彼女の言葉に、救われた。

(し、し、心臓にわりぃー!)

パッと立ち上がって冷蔵庫の中を確認しに行く彼女に背を見ながら、僕はどうにも乱れてしまった脈を抑え込んだ。