オレンジ色にして

少し、なんだろう、暗い影のようなものが彼女の表情をよぎったけれど、僕はそうして、沈黙が出来上がってしまうことが、怖かった。

沈黙がそのまま、彼女になにもかもの主導権を握られる条件のような気がして、そうさせるわけにはいかないと、どうしてか思っている。

焦りっていうんだ、これを。

彼女の対しての違和感を無条件で抱く、姉貴がどうにかなってしまうんじゃないかっていう不安にどうしようもなく急き立てられる、ただひたすらの、焦燥感。

彼女の一挙手一投足を警戒して、あくまでも自分のペースでいるために、口を休めない。

災いの元だって言われている、その口を。

「今度はさ、真乃――」

この瞬間、いまさら、彼女を呼び捨てているということに気づいたけど、無視した。

あくまでも彼女は、彼女と同じ顔をしている、別人だ。