「――晴海ちゃん、気分はどうだい?」

現れた男性のにこやかな笑顔を認めて、漸く目が覚めた心地がした。

「…天地先生?」

「はい?」

聞き覚えがあるも何も、彼――天地 暁(あまち あきら)は母の知り合いの医師ではないか。

先日、陸の怪我を診て貰うために家に呼び寄せたのもこの天地だった。

「…!!先生、そうだ、陸はっ…」

慌てて身を預けていた寝台から起き上がろうとすると、ぐらりと上体がよろめいた。

「ぁっ…」

「晴海ちゃん、危ない!」

天地が慌てて寝台から滑り落ちかけた身体を支えてくれ、横になるよう促された。

「まだ無理をしちゃ駄目だよ。君の怪我は軽い打ち身や擦り傷程度だけど、頭も少し強く打ったようだからね」

少し落ち着きなさい、と天地に優しく言い聞かされ、促されるまま深呼吸した。

「大丈夫、陸くんも無事だ。まあ、あの怪我じゃ暫くは此処にいて貰うことになるけど。 それから此処は僕の診療所だよ」

陸が、無事――天地の言葉に安堵の溜め息をつく。

そうして漸く冷静さを取り戻すと、ふと今度はあることが気になった。

「そういえば、私…どうして先生のところに?」

確か陸が気絶してしまった直後に、自分も気を失ってしまった筈だ。