晴海は大きな寝台の片隅に、何となく落ち着かない気分で蹲った。

『晴海ちゃんの部屋は此処だよ。何か足りないものがあれば遠慮なく言って』

と京に案内された部屋は、やはり一人では持て余してしまうくらい広い。

隣室の夕夏と相部屋にして貰えば良かった。

入浴後、皆揃って夕食を取ったのだが、陸を変に意識してしまって落ち着かなかった。

折角出された料理も、殆ど食べられなかった気がする。

「はあ…」

――邸の造りは全体的に簡素で、家具や調度品も同様だが、やはり一般家庭にあるものとは明らかに質が違う。

見るからに豪華絢爛、というよりは遥かに良いが、然り気ない高級感が何とも言えない緊張を誘う。

その辺りに何気なく飾ってある花瓶一つ取っても、きっととんでもない値段だったりしそうだ。

「傷付けたり壊したりしないように気をつけないと…」

着ていた服は、湯を使っている間に新しいものを用意されていた。

着の身着のまま、着替えなどは持って来れず後で買うしかないと思っていたので、気遣いは非常に有難いが。

この服も、元のものと似た系統のものを選んでくれているものの、こちらのほうが確実に上質なものだ。

こんな立派なものを着させて貰っていいのだろうか。

母と二人、ずっとあの小さな家での質素な生活に慣れていた自分にとっては、不慣れなものが多過ぎる。

「…陸も、私のうちから急にこのお邸じゃ落差があり過ぎだよね」

今頃、陸はどうしてるのかな。