「波野さん聞いてる?」


「あたしは早く家に帰って、晴樹くんで癒されたいんです」


あたしが早く帰るのは晴樹くんに会うため。


もちろん、実際に会うわけじゃないけど。


アニメとか雑誌とか観るつもりなのだ。


「だから早く帰らせてください」


あたしは里中君をキッと睨みつけた。


それでも、里中君がひるむ様子はない。


「イヤだと言ったら?」


余裕そうな微笑みを浮かべ、楽しそうにあたしを見下ろす里中君。


その目には、爽やかさなど微塵も含まれていない。


コイツに関わるとろくなことがない、直感的にあたしは思った。


コイツはアブナイ、と脳が告げる。


「はっきり言ってじゃまです!!」


あたしは大声でそう告げ、里中君を振り切って走り出した。