俺は。
俺は、どうすればいいのだろう。
サユを失ったことは、未だに心に大きな傷を残している。
理不尽に大切な人の命が奪われて、簡単に忘れるなんてできるわけない。
誰より大事な人。
誰より、傍にいてほしかった人。
王女がもっとマシな姫だったら、きっとサユは死なずに済んだ。
そもそも身代わりなんて必要なくて、サユは一生あの街にいられた。俺の隣で生きてくれただろう。
サユが死んだのは、姫のせいだ。
そんな思いは当たり前にずっとあったし、復讐できるなら、どうしようもない姫にサユが味わったのと同じだけの痛みを味わわせてやりたいと思ったこともある。
……こんな形で、姫に出会うことになるなんて想像もしていなかったから。
「……っ、サユ」
思わず呟いた、愛しい名前。
囁き程度の声でも、シンと静まりかえった部屋にはあまりに大きく聞こえ、そこに含まれた痛みも悲しみも困惑も、その声にはっきりと表れていた。


