「私の命を狙っているのは、ミディリアナ・ファゴールよ。
……あなたも名前くらいは聞いたことがあるでしょう?」
心なしか早口で、しかしはっきりと告げた彼女の口から出てきた名前に、思わず目を見開いた。
少しの遠回りもせずに彼女が名前を告げたことが意外だったし、それに、その名前が知っているものだったことにも驚いた。
────ミディリアナ・ファゴール。
国境近くの広大な領地を治めるファゴール卿の息女。
その土地は多くの資源に恵まれていると聞く。
貴族とは何の関係もない俺でさえ知っているくらい有名な公爵令嬢だ。
冷酷な美姫、と皮肉られるクレア現王女に引けを取らない美しさらしい。
というのも、ミディリアナは実はクレア王女の双子の妹で、幼いころにファゴール卿の養女に出されたのだ、ということはまことしやかに囁かれる噂。
それと同時に、嘘か真か、クレア王女が国のトップであることに不満を持っているとも聞く。
「……え、いや。待って。今あんた、妹って……」
表向き、ミディリアナはファゴール卿のひとり娘。
そんな彼女を妹と呼ぶということは。
「!」


