俺が思わず口にした言葉に、令嬢は何の躊躇いもなく口を開く。
「彼らは私の味方ではなかったからよ」
きっぱりと言った彼女。
だけどその言葉はどこか曖昧で、俺は思わず眉を顰めた。
令嬢の声はひどく落ち着いていて、まるで自分の敵を知っているかのようだった。
……いや。
おそらく彼女は、知っているんだ。
自分が命を狙われている理由を。
自分の命を狙っている相手を。
俺には事情を話してくれると言った彼女が、遠回りな答え方をした。
それはきっと彼女なりに何か意味のあることなのだと思う。
彼女と出会ってまだほんの数時間だけど、俺だって人を見る目はそれなりに養ってきたつもりだ。
この頼りなげな令嬢が、決してばかではないことくらいわかる。
だから、彼女が率直に答えなかった質問に踏み込むのは危険なことなのかもしれない。
これ以上深入りしたらいけないような、そんな気もする。
……だけどここまできたら、引き返すなんてできない。
「なぁ。あんたの命を狙ってるのって、本当は誰?」
なんとなく、あの護衛が単独で行っているとは思えなくて、そう訊いた。
味方ではない。
そう言った彼女の口ぶりは、漠然としたものではない『敵』を感じさせたから。


