……やっぱり、令嬢っていうのは品があるんだな。
普段、貴族と関わる機会なんてなかったから、知らなかったけど。
何と言うか、どの瞬間を切り取っても絵になる。
雑な仕草など少しもない。
細い身体は触れたら折れてしまいそうなのに、触れることを許さないような強い威厳が見える。
纏う雰囲気は決して高圧的なものではなく、むしろ優しげにさえ思えるのに。
きっと幼いころから、人に見られることを意識して育てられたんだろうなと、なんとなく思った。
「そういえばあんた、どこから来たんだ?」
髪や顔を拭いた後のタオルを風呂上がりときのように首に掛けながら訊くと、まだ長い髪を拭いていた令嬢は一度、その手を止めた。
そして、ゆっくりと顔を上げると、フードの下から見えた唇が、言葉をためらうように一度引き結ばれ、しかしやがてゆっくりと開く。


