「でもよく考えたら、家族を本気で憎むなんて無理よね。今までフレイは何も言わなかったけど、躊躇いもなくあなたの名前を呼んだのを見て……。
もしかしたら、本当はずっとあなたに会いに行きたかったのかもしれない、って思ったわ」
令嬢のその言葉に、俺は思わず足を止め、振り向いて彼女を見た。
その急な行動に、令嬢は俺より一歩遅れて立ち止まる。
「……」
「ど、どうしたの?」
彼女の顔を隠すフードのせいで、視線がぶつかることはない。
それでも自分をじっと見つめる視線には気付いているのか、令嬢は戸惑ったような声を上げた。
俺は彼女の声を無視して、一歩近づいた。
突然距離をつめた俺に、令嬢が怯えたように少しだけ体をかたくしたのが分かったけれど、逃げることはしなかったから、構わず手を伸ばす。
……顔が、見たいと思った。


