そんなことを話したら、令嬢はしばし黙り込んでいたけれど、やがて、「そうなの」と呟いた。
「私にとってのフレイは、大事な侍女で……。今は、私がフレイの家族みたいなものよ」
そう言った令嬢の口調は、どこか痛みをこらえているような気がして。
もしかしたらフレイが家族から切り離された理由を知っているのかもしれない、と思った。
それを訊いてもいいのか少し迷う。
「……フレイは、どうして」
「両親に捨てられたと、言っていたわ」
俺が何を訊きたいのかを令嬢は分かっていたようで、俺の言葉を遮るように言った。
これ以上は訊くなという牽制を含んでいるように思える強い口調で、俺はそれ以上質問を重ねることはできずに押し黙る。
そんな俺に令嬢は小さく息を吐いて、張り詰めた空気を切り替えるように声色を少しやわらかくすると「だから」と言葉を繋げた。
「だから、驚いた。フレイは家族を憎んでいるのだと思っていたのに、あんなふうに私の護衛を任せたのが……、私の命を託したのが、実の弟だなんて」
そう言った令嬢の口調は、穏やかで。
それがなんだか少し意外だった。


