そんなことないんです、蘭さん。

自分が綺麗な人間だなんて思わない。だって……



「欲なら私にだってありますよ」



そう言って髪を梳かす彼の手に触れ、その温かさを確かめるように頬を擦り寄せる。



「蘭さんに愛されたい。独り占めしたいって、誰よりも思うから」



恥ずかしさを忍んで言うと、蘭さんは一瞬目を見張り、優しく私の頭を引き寄せる。

そして、コツンとおでことおでこがくっついた。



「そんな欲なら喜んで満たしてあげるよ」

「ほんとですか……?」

「もちろん。でもあんまり可愛いこと言われるのは困るな」

「なん──っ」



なんで、と言おうとした時には、私の唇は蘭さんのそれに塞がれていた。


目を閉じるのも、呼吸をするのも忘れて、
ただ唇を触れ合わせる。