「四ノ宮さん、結婚したがってましたもんね。それも出世のためだったのか」

「それ以外に、こんなにすぐ婚約者を紹介する理由なんてないだろ。“次に昇進するのは自分だ”って見せ付けたいんじゃねぇの?
うまいこと利用されて、あのカンナって子も不憫だな」



──渇いた笑い声が遠退いていく。

蓮さんに言われたことをしっかりと裏付けられたようで、血の気が引いていく気がした。



私は、やっぱり蘭さんの出世の手段の一つでしかないんだ……

蘭さんとなら、幸せな結婚生活も夢じゃないと思い始めていたのに。



「はは……バカみたい」



考えてみれば当たり前だ。
こんな短期間で愛が生まれることの方が難しいんだから。


でも、私の中にはもう摘み取ることが出来ないものが芽生えてしまっている。


──蘭さんが好き。

彼に愛されたい、という気持ちが──…