私は肩をすくめながら人の間をすり抜け、ササッと広間を出た。

静かな廊下に出ると少し空気も涼しく感じ、ふうと小さく息を吐く。


大変だな、将来を期待された御曹司って……。

笑顔ときちっとした物腰を崩さずに話す蘭さんには尊敬する。

私には意地悪なことを言う蓮さんも、堂々とした立ち居振る舞いは本当に素敵だと思った。



私みたいな名ばかりの社長令嬢が、本当にこんな人達の家族になってもいいのかな……

そんなことを考えながら用を足し、トイレから出ようとした時。



「まさか蘭に先を越されるとはな」

「俺も先輩の方が先に結婚すると思ってましたけどね」



ドアの向こうから男性二人の声が聞こえて、私はぴたりと動きを止めた。

そっと開けたドアの隙間から様子を伺うと、気怠そうに壁に寄り掛かる男性の姿が見える。