結婚することは、出世するためにそんなに重要なことなのかな。

私はその一つの駒に過ぎないの?


そんなことを考えていると、スーツ姿のまま私の前にしゃがんだ蘭さんは独り言のように呟く。



「明日はどうするかな……」

「明日?」

「あぁ、上層部の人達とのパーティーがあるんだ。そこでカンナちゃんを婚約者として紹介しようかと思ったんだけど」



婚約者として紹介──

それはきっと本当なら喜ばしいことなんだろう。

だけど、それすらも蘭さんの仕事のためでしかないのかもしれないと思うと、とても嬉しい気持ちにはなれなかった。



「でも、もし疲れてるようなら無理して出なくてもいいから」



そう言ってふわりと微笑む蘭さん。

この笑顔が上辺だけのものだなんて──思いたくないよ。