ケータイと紅茶をギュッと握りしめていると、
手の中から紅茶の温かさが消えた。
「もーらい」
「えっ」
あたしにくれたはずの紅茶は、今朝陽さんの手の中にあって、
プシュッと音を立てて、プルタブが開いた。
そ、それ…あたしのなのに…っ。
「あっつ…。火傷した…」
自分のものだと主張する前に、もう朝陽さんは缶に口をつけていて。
「熱いけど、うまいな」
そう言って、あたしの方をチラッと横目で見た。
…ずるい。
その目線、ずるい…。
「泣き虫のあおちゃん、涙止まった?」
そんなからかい口調で言われても、朝陽さんに言われると全然ムカつかない。
これがアヤだったら怒鳴ってただろうに。


