「……バカ……」



そうぼやきながら、前髪をくしゃっと握る。



せっかく市原さんと帰れることになって、近づけるチャンスだったのに。


せっかくのチャンスをふいにして、なにひとつ好意なんか持ってもらえねーことばっか。



こんな俺に、市原さんと仲良くなれる日なんてくんのかな……。



そう思いながら見上げた空は、今にも雨が降り出しそうだった。



市原さん、傘持ってんのかな。


雨、降らねーといいけど……。



そんなことを考えながら、俺は駅までの道を急いだ。