口はパクパクと動いていて、なにか言いたそうなのに言葉は出てこない。
「……市原さん?」
思わず名前を呼んでみれば、市原さんはハッと我に返った。
それから少しうつむき加減に口を開いた。
「は、早く家に帰らなくちゃいけないの思い出した!あたし走って帰るね!」
そう言うが早く、一目散に走っていってしまった。
だんだんと小さくなっていく市原さんの背中を、ただボーっと見ることしか出来ない俺。
……なにか嫌がることしちまったか?
それから思い出したのは、ついさっき市原さんの頬を触ってしまったこと。
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