【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~



「殺してしまうかもしれないけどいいんですか?」


あえて目の前の化け物を…、とは言わなかった。




『構わない。…あれは失敗作でもはや人間に戻る事のない、言う事を聞かぬ単なる化け物だ』



やはりあれは人間だったんだ。


化け物へと視線を向けると、白蛇の気迫がさっきより弱くなっている事に気づいた。



いけない。


早く助け出さなくちゃ---



刀を手に、急いで走った。


一分一秒でも早く、母さんを助けたくて。



でも本当は少し、戸惑っている自分がいる。


私はこの刀であの化け物を切れるのだろうか?



目の前にいるのは化け物。


しかしその化け物も元は人間だったのだ。


それに手をかけるなんて…と、かなり戸惑っている自分がいる。



でも…、母さんを助けるにはこれしか方法がないんだよね?


しょうがないんだ---


そう自分に言い聞かせながら走っていた。




「…ごめんね」



巨大熊の前まで辿り着いた私は一言、小さく謝りながら化け物に向かってジャンプする。



そして刃を化け物へと向けた。