【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~



「…綾香、どうした?」


「ううん、なんでもないよ」



訝しげに見られ、思わずうつむいてしまった。


いけない、蓮に怪しまれる。



すぐに顔を上げた。


それより今は、余計な事を考えている暇はない。




ドシン…、ドシン…---


かなり近づいてきた大きな足音に、私の胸の音も大きくなってゆく。




もうすぐ、このホールに何かがやってくる。




緊張から呼吸が浅くなっているのが分かり、一気に空気を吸った。


そして唇をキュッと引き結ぶ。




まずは…、


来た敵を叩き潰すのみ。



あれ?いつの間に黒服さん、いなくなったのだろう?



まぁ、いっか。


人口密度が少なくなったおかげで、大分動きやすくなったしね。



その時、扉からゆらり…と大きな何かが姿を現した。