【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~



「蓮…」


「気にするな綾香。…家を出る事なんて物心ついた頃からずっと考えていた事だったし、俺の最終目標はこの研究所をぶっ潰す事だ。それより顔の傷…、大丈夫か?」


「うん、かすり傷だよ」


さっき私の頬を掠めた銃弾の痕に気付いた蓮が、自分が傷ついたわけでもないのに辛そうに顔を歪めている。


そんな蓮に何でもないと、笑って答えた。



「女なんだから顔に傷つけんなよ」


そう言いながら蓮の手が私へと伸び、頬を優しく撫でてきた。


愛しげに私を見る金色の瞳がもう離さないとでも言うように、ギラリと怪しげに光る。



何か肉食獣に捕らえられているようで、どうにも落ち着かない。




「…そう言えば以前、『無意識なんだろうけど、鷹を飼うなんてスゲーな』って私に言った事、覚えてる?」


「もう、その答えは分かったようだな」



思わず話題を変えてしまった。


少しでもこの雰囲気から逃れたくて---