【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~



「…何か聞きたいことは?」


「色々ありすぎて…」



全く言葉も出ないと桐生先輩を見ながら続けて言おうしたが、言葉を飲み込んでしまった。


何だかこれ以上、言える雰囲気ではなかったのだ。



だって目の前にいる桐生さんのその顔は、何の感情もない無表情で私を見ていたから---




何となく桐生先輩から視線を逸らし、カプセルの中にいる女性へと視線を向ける。


桐生先輩もそれに続き、カプセルを見た。




目を閉じている目の前のその女性は二十代後半くらいで、とても綺麗な顔立ちをしていた。


何でこんな所に、この人は入っているのかな?




「このカプセルは寿命を少しでも永らえる装置だ」


「そう…。じゃぁ、この女性は…」


「あぁ。この中に入っていなければもう、そんなに永くは生きていけないだろう」